キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 

待合室で堺さんを待つ。

コタロウは診察室のキャリーバッグの中でお留守番だ。

10分も経たないうちに現れた堺さんはふくよかな体型の40代くらいの女性で、「お役に立てて良かったわ」と優しい表情で言ってくれた。

私はお礼を言いっぱなしで、堺さんは「そんなに感謝されると困っちゃうわ~」と言いながらくすくすと笑っていた。

そして、虎谷先生は笑ってくれてはいないとは言え、ここではあまり見せてくれない優しい表情で隣にいてくれた。


「それにしても驚いたわ。虎谷先生があんな表情見せるなんて」

「え?」

「堺さん。それはもういいでしょう?忘れてください」

「やぁね。そんなに照れなくてもいいじゃない?ネコちゃんを見た時の驚き方とか、病院から慌てて出て行く姿、なかなかいいじゃないと思ったのよ?あっ、もしかして、この方、先生の彼女さんだったりするのかしらっ?ふふふっ」

「!!!」


堺さんからとんでもない言葉が出てきて、私は言葉を失ってしまう。

病院では滅多に表情を崩さないクールな先生が驚いたり慌ててた……?

しかも、か、彼女って……!

「彼女」という言葉に勝手に慌ててしまった私に対して、虎谷先生は全く慌てる様子もなく、いつものように病院で見せる冷静な表情で口を開いた。


「坂本さんは堺さんと同じ患者さんですよ。僕はコタロウくんの担当をさせてもらっているだけですから」

「あら、そうなの?つまらないわねぇ。虎谷先生には幸せになってもらいたいのに。堤先生ともよくお話してるのよ」

「お気持ちだけ。僕は毎日動物に囲まれて、十分幸せですから」


その言葉に「人間の女の子にも目を向けなさいよ?」と諭すように言われていたけど、虎谷先生はいつものようにクールな表情で「考えておきます」と答えていた。

 
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