キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
そしていつもはその手には見られないものに、私は気付いた。
右手の薬指にはまった指輪だ。
シンプルだけどキラリと光ってその存在感はなかなかのもの。
右手に付けているから結婚指輪ではないだろうけど、そのシンプルさから考えると恋人とお揃いのものだろう、と想像させる。
……こんなに素敵な人なんだから、恋人くらいいるよね。
いない方が不思議だ。
でも、そう思うのと同時に、相手は誰だろうとつい勘繰りそうになってしまった。
……虎谷先生でありませんように。
そう願ってしまったのだ。
「やだ」
「え?」
ふいに出てきた西岡さんの声に、私は目を向けていた指輪から西岡さんの顔に目線をあげる。
「そんなにじっくり見られると何だか恥ずかしいわ」
西岡さんの手元を隠すような仕草と照れた笑顔を見て、指輪のことだと気付く。
西岡さんに伝わってしまうくらい、私はマジマジと指輪を眺めてしまっていたらしい。
私は慌てて謝る。
「あっ、ごめんなさい!素敵な指輪だと思って、つい」
「ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。職業柄、普段は指輪をつけられないから、実は慣れてなくて。でも、彼にもらった大切なものだし本当は身に付けていたいから、休みの日にはつけるようにしているんです」
「そういうの、素敵ですね」
「ありがとうございます。嬉しい」
嬉しそうに、幸せそうに、西岡さんは笑う。
そして、手に持った買い物袋を少し上げて、ぺろっと舌を出した。