キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「私、あなたの笑顔がとても大好きなのよね。病気をしていて辛いことも多いけれど、病院が終わってからお薬を取りに来た時にいつもあなたが笑顔で迎えてくれるでしょう?何だかね、私も一緒に笑顔になれるの。あなたには……そう、心のお薬をもらっていると言えばいいのかしら?これからも笑顔のお薬、よろしくお願いしますね」
「!はい……!」
女性はとても柔らかい笑顔を浮かべて、ゆっくりとお辞儀をして薬局を出て行く。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
……笑顔が心のお薬?
そんな風に言われたのは初めてのことで、私はこの嬉しさをどう整理すればいいのかわからなかった。
でも、気付いたことがあって。
……虎谷先生の笑顔も、私にとっては心の薬だったな、ということ。
雨で憂鬱な日でも先生の太陽のような笑顔を思い出すと少し気持ちが上がったし、目の前でその笑顔を見た日には私の心はポカポカとあたたかくて、辛いことも何もかも忘れることができた。
あぁ、それと同じことなのかなと気付いた私は、お客さまの言葉の大きさに感動してしまった。
……なに、これ。すごくすごく嬉しい……。
「……さん?坂本さん?」
「え?あっ、すみません!」
嬉しさのあまりつい一点を見つめてぼんやりとしてしまっていると、隣にいた私と同じ調剤薬局事務の仕事をしている田仲さんが私の名前を呼んでいた。
私ははっと我に返り、田仲さんに咄嗟に謝ってしまった。
「ううん。今待ってるお客さまはいないからいいけど、どうしたの?ぼーっとするなんて、坂本さんらしくないじゃない」
これそっちの棚に入れてくれる?とファイルを渡され、私はそれを仕舞った後、田仲さんに顔を向けた。