キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「……あ、あの、今お客さまにお礼を言っていただけたんです。“私の笑顔は心のお薬”なんていう素敵な言葉までくださって。そんな風に言われたのは初めてのことだったので感動してました……」
「あら。良かったじゃない。それに、すごく素敵な言葉!」
「はい……」
「お礼なんて滅多に言われないものね。お客さまと直接お話しさせてもらうから対応の仕方もいろいろ考えちゃうし、そういう言葉をもらえるのって嬉しいわよね。私も何度か言葉を掛けてもらったことがあるけど、すごく嬉しかったの覚えてるわ。ほら、悲しいけど、普段は逆の言葉を言われる方が多いから。ふふっ」
「……そう、ですね」
こそりと田仲さんが耳打ちをしてきた言葉に、私はこくりと頷いた。
『問診票なんて書く必要はない』、『薬剤師に対応して欲しい』、『早く薬を出せ』、……もっともっといろんなことを言われることもある。
お客さまは病気でここに来ている方が多いから、体の不調でイライラしているお客さまがやっぱりいて。
少しでも負担にならないように、嫌な気持ちにならないようにと気を遣ってはいても、接するのはなかなか難しいんだ。
ただ病気を治すためのお薬を受け取ってもらう補助をするだけじゃない。
私の笑顔が“心のお薬”になると言ってもらえるのなら、私はお客様を少しでも笑顔になってもらうための役に立ちたい。
「これからも私、頑張ります」
「え?ふふっ。そうね、一緒に頑張りましょう」
「はい」
突然の「頑張る宣言」にも関わらず田仲さんは頷いてくれる。
先輩にも上司にも恵まれているんだもん。
最近は仕事に慣れてきたこともあって、無意識のところで何となく仕事をこなすことが多くなっていたかもしれない。
もっと周りを見て、お客さまを見て、仕事をしていきたい。
私は目の前がすっきりと開けたような感覚がして、すごく心が軽くなった気持ちだった。