キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
少しだけ憂鬱になってしまいながら、公園の横の道を足早に歩いている時だった。
「……あら?あなた、あの時の?」
「!」
突然女の人の声が飛んできて、私ははっと声の方に目線を向けた。
目の前から歩いてきているのは見たことのある女性とワンちゃん。
私はすぐに記憶をたぐりよせ、あっ、と声を口に出していた。
「堺さん、ですよね!?コタロウのことを助けてくれた……こんにちは!その節はありがとうございました!」
「やっぱり、あの時の方ね!いえいえ~いいのよ~」
そう。その人はコタロウがいなくなった時にコタロウを発見してくれた堺さんだ。
まさかこんなところで会うなんて思わなかった。
ようやく消えかけていたコタロウのいない時間の悲しさの気持ちが蘇ってきてしまって、目頭が熱くなるのを感じる。
いつか笑い話になるのかもしれないけど、まだ今はそう思えないのだ。
でもこんなところで泣くのはおかしいからと、私はぐっとこらえた。
「今日はネコちゃん……あ、コタロウくんだったかしら?コタロウくんは一緒じゃないのね?」
「あっ、はい。コタロウには家で留守番してもらってて。堺さんはワンちゃんのお散歩ですか?」
「そうなの。連れて行けってうるさくて」
「私も昔、豆しば飼ってたことあるから想像つきます。私もよく散歩をせがまれてましたよ~」
豆しばというのは実家にいた頃に飼っていたモコのことだ。
「あらっ、そうなの?この子ね、マメって言うの。主人が根っからの豆しば大好きで飼い始めたんだけど、今では私の方が夢中なのよね。すっかり虜になっちゃったわ~ふふっ」
マメちゃんは尻尾を左右に振りながら、じっと堺さんのことを見ている。
モコもこんな風に私のことを見ていてくれたな、と懐かしく思う。