キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
~疑惑
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「はい。よく我慢しましたね。コタロウくんは大人しくしてくれるから助かります」
目の前にいる獣医さんがコタロウの頭をぽんと撫でた。
コタロウは目を細めて気持ち良さそうな表情を浮かべ、私はコタロウを撫でたその優しい手を見つめる。
……獣医さんとは、もちろん樹さんのことだ。
動物病院に行くのは樹さんと付き合い始めてから初めてで、特に何があるわけでもないのに、私は緊張していた。
今日は仕事のお休みを取って、朝から年に一度のコタロウの予防接種を受けに来ている。
「注射の副作用が出る子がたまにいますので様子を見ておいてください。以前の時は特に問題はなかったようなので大丈夫だと思いますけど、もし具合が悪くなるようであれば、すぐに連絡ください」
「はい」
「では、いいですよ」
「ありがとうございました」
樹さんは以前と変わらず、私に笑い掛けることもコタロウをいつものように撫でることもなく、やっぱりクールな様子で対応してきた。
それが逆に私をドキドキさせる。
コタロウはというと、樹さんのことを見て、何で遊んでくれないんだろう?とにゃおにゃお鳴いていた。
コタロウの鳴き声に樹さんの表情が少しでもいいから崩れないかなと見ていたけど、崩れることはなかった。
さすがだ。