キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「よし、コタ帰ろうね」
私がキャリーバッグにコタロウを入れていると、「先生」と西岡さんが樹さんに声をかけたのが聞こえてきた。
西岡さんと会うのはスーパーで会った時以来だ。
つい先日コタロウのご飯を買いに来た時は西岡さんは受付にいなかったから。
西岡さんと顔を合わせるのは久しぶりで、どういう顔をしていったらいいかと前日から少し不安になっていたけど、病院に行ってみれば西岡さんはいつものように接してくれた。
あの時のことが何もなかったかのように。
というか、西岡さんは私と樹さんとのことを知っているのだろうか?
……こんなにも普通に接してくるということは、もしかしたら何も知らないのかもしれない……。
今のところ変なことにはなっていないけど、私はやっぱりふとした時に西岡さんのことが気になってしまっていた。
樹さんとは土日にちゃんと会っているし、一度だけコタロウと一緒に樹さんのおうちにもお邪魔した。
コタロウは初めての場所にやっぱり戸惑ってしまっていたけど。
その時は何があるというわけでもなくて、部屋も特に気になることもなかった。
何だか探っているようで罪悪感を覚えてしまったけど、ホッとしたのも事実だった。
樹さんの言葉は本当で、西岡さんの言葉が嘘だったのだと。
西岡さんが“自分は樹さんの彼女”宣言をしたことを考えると……西岡さんは樹さんのことが好きなんじゃないかって思うんだ。
だから、私と樹さんが公園で会っていることを知って、あんなことを言ってきたんじゃないかって。
そう思うと……どちらにしろ、私の存在は西岡さんにとって嬉しくない存在なんだと思う。
って、ダメダメ!こんなところでこんなこと考えちゃ!
私はぷるぷると頭を振って、キャリーバッグの扉をゆっくりと締めた。