キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「堤(つつみ)は腕も診る目も確かだから安心して大丈夫だよ。治療費もうちと同じくらいだろうから」
「あの、堤先生、ですか?コタロウが診てもらってるのは虎谷先生っていう方なんですけど……」
「あぁ、つつみぎはうちと違って、ドクターが二人いるんだ。あの堤が雇うくらいだから腕は確かと見て大丈夫だと思うよ。堤は温和そうに見えて、腕は立つし、何より厳しいところがあるから」
「先輩の僕にさえ、治療方法について熱く議論を語ってくるくらいにね」と先生は苦笑いを浮かべる。
「そうなんですね……。虎谷先生って森本先生とは違って全然笑ってもくれないしクールな印象なんですけど、確かに……コタロウの治療や説明は丁寧にしてくれたと思います」
「そうか。まぁ獣医なんて結局一人の人間だから、接し方はそれぞれだろうね。でも、コタロウくんの傷口もキレイなものだから、うん。心配しなくても大丈夫だろう」
そう言って、森本先生はコタロウと握手をするようにその前足に軽く触れた。
私の膝の上にいるコタロウの身体がほんの少しだけ揺れたのは、突然触れられて驚いたからだろう。
そう言えば、と私は思い出したことを口にする。
「あ、それに……コタロウが怯えなかったんです」
「え?コタロウくんが怯えない?」
「はい。不思議なんですよね……コタロウが男の人に怯えないのは滅多にないことだから。女の動物看護師さんに対してはいつものように怯えてたのに」
「そうか……」
つつみぎ動物病院に行った時、西岡さんに対しては怯えていたからコタロウが人のことを怯えなくなったわけではないことは確かで。
コタロウは“虎谷先生だから”、怖がっていないと思うんだ。
こんなにもあっさりとコタロウが人を受け入れるのは初めてで、未だに私は信じられない気持ちでいた。