キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
2.クールな獣医とその素顔
~秘密
***
「はい。もう大丈夫ですね」
「完治、ってことですよね?」
「そうですよ」
「良かった……。コタ、良かったね~」
私は診察台の上に大人しく座っていたコタロウを抱え上げ呼びかけると、コタロウが目を細めてにゃおと鳴いた。
コタロウが前足を怪我した日から約3週間。
つつみぎ動物病院に通い始めて4回目で、少しずつだけどこの病院の雰囲気に慣れてきた。
治療のために剃られてしまっていた毛も生えてきたし、傷跡は残っているものの痛々しさはほとんどなくなったと思う。
完治宣言が嬉しくてコタロウの身体を抱えて「またたくさん遊べるようになるね~」とゆらゆらと揺らして見つめ合っていると、カルテに目を落としていた虎谷先生が顔を上げ、いつものように笑顔のない表情で声を掛けてきた。
「坂本さん。堤先生からお聞きしました。コタロウくんの担当医を僕にしていただけると」
「あ!そうなんです。今まで桜ヶ森にあるモリモト動物病院に行っていたんですけど、森本先生からかかりつけの病院は家から近い方がいいから、と転院をすすめられたんです。堤先生と森本先生、お知り合いらしくて」
「そうみたいですね」
「気付いてらっしゃるかもしれないんですけど……コタロウ、慣れない人や男の人に対して怯えるんです。でも、不思議なことに虎谷先生に対しては怯えないので……森本先生にもそれをお話したら、それなら大丈夫だろう、って言ってくださって」
「……あぁ、なるほど」
納得したような虎谷先生の表情に、コタロウのことをやっぱり気付いていたんだ、と思った。
虎谷先生は必要以上にコタロウには触れないけど、それ以上に動物看護師さんにも必要な時以外は触れさせようとしないから、もしかしたら気付いているんじゃないかと思っていたんだ。
何も伝えていないのに気付いているところは、さすが動物のお医者さんだなと感心した。