キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
~恋心
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信じられない。……まさか。
「好きな人ができる、なんて」
この先、きっとコタロウに癒されながら人生を過ごしていくんだろうなと思っていた。
それなのに、つい先日私の心の中に芽生えたのは、人間の男に対する『恋心』だった。
とは言っても、相手はコタロウの担当医で。
獣医と患者の関係がどうこうなるなんて、どう考えても難しい……というか、どうにもなる気はしない。
なんせ、虎谷先生はどこからどう見ても『イケメン』の部類だ。
その手の薬指に指輪がはまっているところを見たことがないとは言え、獣医だから平日の昼間は外しているとも考えられるし、指輪をしない人なのかもしれない。
もし結婚をしていないとしても、あの容姿なら彼女の一人や二人はいるだろう。
……そもそも、家に呼んで何も起こってないことを考えると、女としてさえ見てもらえてないということなんだと思うし。
っていうか、彼女がいるかもしれない人を家に呼ぶこと自体おかしいのかもしれない、なんてことに今更気付く私もどうかと思う。
「……これ、不毛な恋、ってやつ?」
それ以前に、先生が興味を持っているのは私なんかじゃなくて、コタロウなんだよね。
あんなにコタロウのことを溺愛する虎谷先生が、今から私に興味を持ってくれるとは到底思えるはずもない。
はぁぁ、とベッドの上でゴロンと転がってため息をつく。
すると、今日は少し気温が高いからかフローリングの冷たい床にびよーんと伸びていたコタロウがハッと私の方を向き、尻尾をぴんと立てて、とてとてと歩いてきた。
「コタ~。どうしよう」
恋のライバル(?)であるコタロウに問い掛けるけど、もちろんコタロウが答えることはなく。
コタロウはベッドの上にぴょんと飛び乗ってきて、私の顔にお尻を向けて、すとんと座り込む。
そして、くわぁぁと大きくあくびをして、お尻を私に向けたままぽふんと伏せた。
「む。もーコタ!何すんのっ」
ぺんっとコタロウのお尻を軽く叩くと、コタロウが何事かと私の方を振り返り、目を細めてにゃっと短く鳴いた。