微熱で溶ける恋心
ぎゅっと、更に距離を詰めてきた彼にそれと同じだけ距離を取り、
「・・・何よ」
少しだけ睨んだところでまったく意に介さないよう。
そのまま真顔で、
「何だよ、たった一度寝たくらいで彼女気取りか?」
私に苦い過去を無理やり思い出させた。
「嫉妬?」
「違っ・・・」
「気になる?あの子のこと」
首をブンブン横振るも取り合って貰えない。
本当?なんてどんどん近づいてくる逸平に逃げようにもこのままだと体が仰け反り過ぎて椅子から落ちそう。
そんな私の背中を支えた彼は、
「どうする?このままキスしちゃう?」
甘い顔で囁いた。
「ダメ・・・」
「本当にダメだと思ってるなら拒否して」
そのまま顔を近づけてくる彼に、ぎゅっと目を瞑って、
「・・・ごめんなさい」
その肩を、やんわり押し返した。