微熱で溶ける恋心


対する私はホテル5階に位置する、このホテルの従業員専用食堂、「マーメードラウンジ」のオーナーをしている。


彼はうちの会社から見るとクライアントでありお客様であるのだけれど、そんな関係はとっくに崩れ去った。




私は聞かなくても分かる、逸平が食べたいであろう鮭フライにタルタルソースをかけながら、


「今日のポジションは?」


業務上最低限聞いておかなければいけないことを聞いておく。


仕事だ、と言い聞かせて。



「今日はギャラ1」


宴会場はギャラ1、ギャラ2、ムーンの3種類があり、私は横目でメモを見て、


「ギャラ1、宴席終わるの19時半よね?」


ガタン、と怒りを込めて置いたお皿から僅かにフライがずれた。


「・・・そうですね」


「本日、ギャラ1はヘルプが13人来ていると聞いたのですが。」


私も知らなかったのだけれど、宴会など、ここのホテルの定義は10人のお客さんに対してウェイターが1人の計算をしているよう。


ウェイターはその都度派遣を雇っているので、私たちはその情報を貰って料理の食数を決めているのだけれど、




「あのさぁ、」


「ん?」


「・・・うちの食堂、19時半までって知ってる?」


終わってからヘルプさんが食べに来るのじゃ遅い。





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