微熱で溶ける恋心
もうすぐ1年前の話になる。
それは正に突然で、その日、いつものように鳴った内線を取ると、相手は逸平で。
「取り置き?それともギャラのヘルプの件?」
用件を先走った私に、酷く落ち込んだ声で、
「・・・社長が、事故に遭った」
端的に、告げた。
丁度その前日、営業後逸平が余り物を食べ、その横で私が喋る。
そんな光景に、珍しく社長が現れた。
偶然マーメードラウンジの外の自販にコーヒーを買いに来ていたらしく、
「逸平くんはこんな遅くまでご飯も食べられないくらい仕事してるんですね~」
なんて感心して、私たちにも飲み物をご馳走してくれた。
彼は良くここを利用してくれていたけど、それでも忙しい身。
だから、こうやってゆっくり3人で話す事が出来て、私も、恐らく逸平も凄く嬉しかっただろう。
とても幸せな夜を過ごしたばかりだった。