微熱で溶ける恋心
私だって好きだった。
あんな格好いい男、好きにならない訳がなかった。
でも格好良すぎて、仕事も出来て、人気者で、
そんな人が私と釣り合う訳がない。
そう、あれはたまたまそうなってしまって、逸平が勘違いしただけ。
もしあそこで仮に付き合ったとしても、離れたらすぐにダメになってしまう。
これで良かったんだ、とホテルを後にし、その後は新規オープンの準備でバタバタして、前の職場を思い出すことはなかった。
無事オープンし、やっと軌道に乗った頃、係ってきた1本の電話に心底驚いた。
「俺、蔵原だけど」
「っ、」
どうしてここに、なんで!?
そんな気持ちを抑えながら応答すると、
「悪いけど、一度時間取ってくんねぇ?」
その一言で、何かあったとすぐに分かった。