微熱で溶ける恋心
「悪いな、呼んで。」
逸平と外で会うのは葬儀以来だった。
お互い仕事帰りに落ち合ったカフェ。
彼は浮かない顔をし、
「本当、困ってるんだ」
そこからはひたすら愚痴だった。
後任で食堂に入った会社はとにかく融通が利かない。
取り置き無し、営業時間を1秒でも過ぎると今日は終わりました。
品切れは続出、こちらの都合は一切聞いてくれない。
「本当、お前のとこがどれだけ幸せで、融通聞かせてくれてたか痛感してるよ」
眉を下げる彼、心なしか少し痩せたか。
「お前、凄かったんだな」
「そんなことないって」
「遅くまで残ってくれて」
「そりゃ需要があるからね」
あなたのためなら、という素直な心内は隠した。