微熱で溶ける恋心


「そうだ、ギャラ2とムーンは?」


「分かんないから聞いて連絡する」


「絶対だよ?」


「分かってるって」


なるべく交代で食事休憩取らせるように頑張るから、と肩をすくめる。


営業時間を延ばすとパートさんにも残業を頼まなければいけないし、申し訳ないから出来ればそうして欲しい。





じゃあね、と手を挙げた私に不自然に近寄った彼は小声で、


「俺のだけ取り置きしといてね。20時までには来るから」


器用にウインクをこなす。



無駄に色気を振りまきすぎだ、馬鹿。


そんなことは言わず、律儀に取り置きカードに


「20時 ギャラ1 蔵原」


なんて書いている自分に気づき、大きな溜息を吐いた。




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