微熱で溶ける恋心
「ん?何?」
「いや、だって面白いなぁって」
言ってる意味が分からず首を傾げると、
「蔵原くんが頑張るなら来るでしょう、全員」
その意味をよく咀嚼して、それから。
「こら。」
私がむくれると、窘められた意味は容易に理解出来たのだろう。
ぺろっと舌を出してまた持ち場に戻っていた。
そうだ、あいつは憎たらしいことに仕事は出来るのだ。
逸平が頑張る、と言ったことは十中八九その通りになる。
蓋を開けてみたら全然爽やかじゃなかったし、ここではだらしなくだるそうにしているけれど。
憎たらしさの塊だけれど。
それでも、真面目に仕事をこなしている逸平を見ると未だに少しだけ、本当に少しだけかっこいいな、と思ってしまう。
(モテるからなぁ・・・)
今日は1人で食べに来ていたけど、ウェイトレスの女の子やクリーニングの女の子を連れていることが良くある。
あれで彼女いないからなぁ。
そんなことを一瞬でも思ってしまった自分に呆れ、出てしまった溜め息。
遠くでまたクスクス笑う声が聞こえた。