紫季と惺
ある日の休日

紫季のある日の休日

 それから、またしばらく、惺とは会わなかった。会社でも、家でも。


 連絡もその間、取らなかった。









 そろそろかな。


 休みをもらった、ある日の昼間、私は、惺に電話をかけた。









「もしもし…。」


「もしも……、誰…。あ、紫ちゃん。おはよー。」


「今、電話大丈夫でした?」


「うん。大丈夫。寝てただけだから。それで、何?俺の声、聞きたくなった?」




 あ、何も考えてなかった…。




「えっと…、うん。聞きたくなったの。電話したらダメでした?」


「ダメなことないよ。オレは、嬉しいよ。」


「よかった。」




 でも、何話ししよう?




「紫、映画行かない?」




 映画?いいけど、せっかくの……。




「そっか。紫ちゃんは、今日休みなんだよね?ごめん。忘れてた。せっかくの休み、家にいたいよね?」




 私の考え、読まれてる?




「せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい。家でゴ…あ、違う。このまま、惺さんの声、聞きたいの。」


「じゃ、オレそっちに行く?」


「ダメ。私の家、汚いから。」


「えー、紫の家、みたいよー。」


「私の家、普通のアパートだし、見なくていいですよ。」


「紫、来る?」
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