紫季と惺
「えっと、こんにちは。惺さん。」


「いらっしゃい〜。紫季ちゃん。近かったでしょ?紫の家から。」


「うん。近かった。でも、どうして私の…。」


「まぁ、いいじゃない。そういうの。」




 また、はぐらかされた。






「うん。まぁ、いいよね♪惺さんの声、生で聞けたし。えっと、こんな格好でごめんね。」




 惺に電話した理由として、声が聞きたいからって言ったから、そこは貫こう。




「別にいいよ。気にしてそう言わなくても。」


「えっ?」


「もうちょっとラフな格好でも良かったのに。」




 あぁ、そういうことか。
 

 私の今の格好は、サンダルにワンピースに、カーディガン。


 顔は、薄く口紅とアイシャドウだけ。




「TシャツにGパン、顔は、すっぴんで来るかと思った。」




 すっぴんはどうかと思うけど、私もTシャツとGパンで来たかった。でも、やっぱり…。




「そんな格好で来れませんよ。一応外出するのだし、人の家に行くのに、すっぴんとか無理です。」


「そっか。うん。紫、来てくれてありがとう。そこら辺に座ってて。飲み物、何がいい?コーヒーでいい?」


「あ、コーヒーでいいですけど、私、入れますよー。」
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