紫季と惺

「いいの。いいの。紫季ちゃんは、座ってて。横になっててもいいけどね。」


「え、でも…。」




 惺は、私の肩を押して、無理やり座らせた。














「お待たせ。コーヒーをお持ちしました。紫季様。」


「『様』って…、なんですか?」


「えっと、ちょっと言ってみただけだから。」


「ふーん。あ、コーヒーありがとうございます。」




 え?もっと気の利いた答えを言うと思ったのにと、私は、そのコーヒーを飲んだ。






「紫は、何が好きなの?」


「え?」


「食べ物、何が好きなの?」


「えーと、お…オムライス!」




 お肉使った料理なら、何でも好きだけど…って言おうと思ったけど、やめた。




「オムライスか。」




 それから私は、質問攻めにあった。












「あ、もうこんな時間…。」


 気づいたら、もう日が暮れていた。


「惺さん、仕事は?」


「あー、もうこんな時間かー。行かないと。あ、これここの鍵だから、紫、適当な時間に、帰って良いよ。」


「えっ?でも…。」


「良いから。良いから。」




 私は、鍵を受け取った。




「じゃあ、鍵、ポストに入れて帰るね。」
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