紫季と惺
「えっと…?」


「あ、やっとお目覚めになりましたか。お姫様。ここは、僕の部屋のベッドの上です。」




 わざとらしく深々とお辞儀をした、惺という人。




「あ…。」





 私は、不覚にも、お姫様抱っこの間、ずっと寝てたみたい。




「おっと。俺は、あんたに何もしてないから。」




 私の強い視線に気付いたのか、惺は、慌ててそう言った。




「あ、そうみたいだね。私、服着てるし。」




 私は、自分の体にかけてある布団を軽く持ち上げて、自分の衣服を確認しながら、そう言った。




「オレ、今から仕事だから、話し相手はできないけど、落ち着くまで、そのベッドつかっていいから。じゃ。」





 惺は、出て行く準備を始めた。




「今から、仕事ですか?夜ですよ。もしかしてホスト?」


「え?ホストに見えた?そんなに、オレ格好良く見える?」


「見えない。ただ軽くて、まぁまぁ、女受け良さそうだから。」


「そんな、即答しなくても…。オレ、ホストじゃなく、警備員してるんだ。おっと、もうこんな時間か。じゃーね。あ、冷蔵庫のもの、勝手に使っていいから。一応、働いてる場所、ここだから。」





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