紫季と惺
「ねー…。」




 私の声は、むなしくドアにぶつかっただけだった。




「結構有名な企業の警備員なのね。」




 私は、ベッドの横のローテーブルにあった紙切れを手にとって、呟いた。




「もう帰ろうかな。もう立てるだろうし。」


「あー、痛いわ。まだ。いつ治るのよ。この足。あ、もー。」







 自分の足を叩いた私だったけど、痛いだけだったので、慌てて叩いた足をさすった。


 何してるんだろう。私。





 森山にでも、電話しよっと。



 Rururu…


「森山。今電話大丈夫?」


「あ、紫季ちゃん。大丈夫だよ。」


「あー、森山。喫茶店の作戦、ちょっと失敗して、失敗した結果、惺の部屋にいるの。」


「えー、大成功しゃないの!」


「森山が、そう言ってくれて、よかった。これからどうすればいいかなって。」


「うーん。紫季ちゃん、今日、自分の家帰るよね?」


「ごめん。わからない。捻挫して…。実は、惺の家に来たのも、捻挫が原因でして…。」


「どうして、謝るの?もう惺のこと、気にしてないし。嫌いだし。」


「…ありがとう。」


「なんかお礼言われることしたっけ?まぁ、いっか。えっと次はね、甘える作戦…」
< 8 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop