彼のヒーローヴォイス

その週末、外泊届を出し実家に戻った。


母には事前に電話で、スカウトされたことと、一緒に事務所へ行ってほしいことも伝えた。

最初は驚いた母も、私の夢を知っているから、頭から反対はしない、と言ってくれている。


問題は、父だ。


父が一旦戻ってくる夕診の前の時間、リビングでテレビを見ながら待っていた。

だけど、待てども父が戻ってくる様子がない。

昨日、父に私が戻って話があると伝えてくれてるからわかっているはずなのに…。


見かねた母が、父の秘書に連絡をとってくれた。


電話を切った母の表情が硬いから、来ないことはすぐにわかった。


「怜 お父さん、大学病院のお手伝いに行ったそうなの 明日は出張だし…。
怜が戻ってくることはわかっていたはずなのに…。残念だわ…」


眉を下げた母は、私が座っているソファの隣に座り、膝の上に置いていた手の上に母の手が重なった。


「…。じゃぁ、お母さん、一緒に事務所へ行ってくれる?」


「そうね、言い出したら聞かないのがあなたの性格だものね。お父さんにはもう一度お母さんから話しておくわね。」


「ありがとう…。」


私が深い眠りに陥っていた深夜
父は帰宅し、そして、翌日、出張のため、朝早くに家を出かけたそうだ。
結局、父に会うことができず、母に見送られながら寮へと戻った。
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