彼のヒーローヴォイス
母とは駅で別れ、寮へと戻った。
緊張のせいもあってか、どっと疲れが押し寄せてきたので、寮の近くの公園へ行き、
ベンチに座って、コンビニで買っておいたペットボトルのお茶を飲んだ。
「はぁ…。」
「なーにため息なんかついてんだぁ?」
え…?! 聞き覚えがある声が聞こえてきたので、声がした方を探すと…
「純一?!」
うそ…。なんでいるの?
「怜、今、なんでいるんだ?って思ったろ?」
え…。 バレた…。
「おま、わっかりやすっ!」
私の前に立ち、くしゃくしゃな笑顔で笑う純一に、なんだか気づかれもどこかへ行ってしまった。
「ほれ、コレ」
何かが入った小さいサイズのレジ袋を私の顔の前に差し出す。
なんだろう…。
受け取って袋の中身を確認すると…。
「わっ! シュークリームっ!」
数あるコンビニのスイーツの中で、私の一番好きなシュークリームだった。
純一はちゃんと覚えててくれてるんだ。 なんだかそんなちょっとのことが嬉しい。
「食べていいの?」
「当たり前だろ~が~。あ、オレの分もあるし~」
そういって、私の膝の上の袋から1つ取り出した。
そして、私の隣に座り、シュークリームの封を開け、無言で食べ始めた。
「……。」
なんだろう…この沈黙は…。
純一…なんで何も話してくれないのかな…。
「あー うまかった! やっぱ、怜の言うとおり、ココのコンビニのシュークリームが一番だなっ」
食べ終えたシュークリームの袋をクシャクシャっとし、入っていたコンビニ袋へ入れ、私の傍に置いたペットボトルのお茶を手に取り、キャップを開けてゴクゴクと飲んだ。
「あ、ちょっと純一!」
半分以上減ったお茶を私の傍に置いて
「さてと、帰るかな」
そう言って、立ちあがった。
え…? なに? 今日、私が事務所へ行ったこと知ってるハズなのになんで何も言ってくれないの?
「ちょっ、純一?」
まだ少し残ってるシュークリームを手にしている私は、その場を動けず、少し切なくなって小声で純一の名を呼ぶ。