彼のヒーローヴォイス

「もしもし…? 純一?…」


『……。あ…う、うん… 怜、お前、その野外フェス、行ったことあるか?』


んー、なんだろう…、いやに歯切れ悪そうなカンジ…。


「ううん、行ったことないよ、高校の友達は何人か行って、凄かったってゆーのは聞いたことあるけど…。
え?何?何? なにかあるの?」


なんのことだかわからない私は、答えを急かす。


『んーー、夏だし、野外だけにさ、盛り上がってくると、アーティストたち、客席に水かけたり、暑いから出演者とか脱ぎだすんだよ、

まぁ、女性アーティストは、脱ぐっていっても水着になるんだけどな…。
毎年、お決まりみたいらしくてさ…。』


う…そうだったんだ……。
荒井さん、なにも言ってくれなかった…。
てか、デビューに気を取られてたから、なにも、考えてなかった…。


「………。」


『おい、怜? 聞いてるか?』


「あ、う、うん…。そっか、水着…、そう、なんだ…。」


『仕事…だけど…大丈夫か? 怜?』


心配そうな純一の声…。


「あ、うん でも、仕事だしね! 
それまでにダイエットしなきゃね お腹ポッコリじゃ、みっともないしっ」


不特定多数の人に、水着姿を見られるなんて、考えただけでも鳥肌たってしまうけど、
これ以上、純一に心配をかけたくなかったから、元気を装って応えた。


「あ!純一の出るCD、発売日、決まったら教えてね。絶対買うから。」


『あぁ、わかった。 怜?』


「ん? なに?」


『がんばろうな…。』


優しさがいっぱいの純一の声が耳に響いた。
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