彼のヒーローヴォイス
サマーフェスのデビューに向けて着々と準備が進む。
今回のデビュー曲が、なぁんとっ!
7月スタートの新アニメの主題歌ってコトも知らされて、私たち3人は、もうテンション上がりまくり!
そのアニメも中高生に人気のライトノベルのアニメ化とあって、秋~年末に各地でイベントもあって
私たちもそのイベントに参加して主題歌を歌わせてもらえることになってるそう。
と、いうことは…。
出演声優さんたちにも会える!というワケで…。
超、超、ハイテンションな私。
ただ1つ、気がかりなことが…。
サマーフェスだけでの水着は、ライブだから、その日だけで終わるから目をつぶろうと思うけど…
主題歌PVも、水着を着て歌うシチュエーションがあるという…。
それを聞いた私は、専務に直談判、しているところ…。
「だからね、怜ちゃん… 夏の恋がテーマの主題歌だし、
全カット水着が映るワケじゃないし、撮影班も女性を多くしてもらうから、
なんとか頑張ってもらえないかしらね?」
まだ、レッスンが始まる前、私と専務以外誰もいない事務所のソファで私と専務が対峙してる。
「ほら、撮影だって、沖縄よ、青い空と海、水着にならなきゃ、もったいないじゃない?」
いや、専務、もったいないとかそーゆーんでなくて…。
何か言おうかと思ったけど、言葉が見つからず、ため息ひとつだけこぼれた。
「ね? ダメかなぁ? 怜ちゃん?」
こ、今度は、甘え上目遣いデスカ…。専務…あなたはナニモノですかー?!
「はぁーー…。 では…条件を…つけさせてください。」
ただの小娘の願いは聞いてもらえないのならば…。
「露出の少ない水着でお願いします!! リナのように手足が長くてスタイルがいい子には
露出大のものを着てもらって、私は、出来ればラッシュガードに近いものにしてもらえたら…」
私の言葉を最後まで聞かずに専務が答える
「あー… 怜ちゃん、ラッシュガードはちょっと無理だけど、スタイリストのハナちゃんに何着か用意してもらってその中から選ぶ、ってゆーのはどぉかしら?」
うーん…リナのスタイリストもしているハナちゃんなら、信用できるし、私の希望に近いものを用意してくれると思う
「わかりました。では、ハナちゃんの選んだ中で考えます」
「そう! 良かったわ! 沖縄出発は明後日だから、体調崩さないようにしておいてね」
「はい」
ソファから立ち上がった専務は、私の肩を軽くポンと叩いて、事務所を跡にした。