彼のヒーローヴォイス

1時間ほど経った頃、スマホの呼び出し音が鳴った。


考え疲れて、ベッドに横たわってウトウトとしていたから、飛び起きて画面をスライドさせた


「もしもし! 純一?」


『おぉ、怜、撮影順調かー?』


「あ…ぅん…」


『なんだ? なんか声暗くね? なんか、失敗でもしたのかぁ?』


私を元気づけようとしてくれる。


「ぅん… 失敗とかじゃ、ないんだけど…。」


『うん? なんだ?』


明日の撮影のことを全て話した。


『……。』


あー 純一も呆れてるのかな…。やっぱプロ意識が足りない、って思ってるだろうなぁ…


『怜、どうしてもイヤなら、もう帰ってこいよ…
今からなら、今日の最終便に間に合うだろ?

そんで…。

イヤじゃなかったら…
オレの通ってる養成所入って、また頑張ればいーじゃん?

オレは、どんな道でも怜の味方だし、応援するぜ。

ホントは、オレだって…。』


「え?…なに?…聞こえない…。」


最後の方は、純一の後ろの音が騒がしくて聞き取れなかった。


だけど、純一の言葉で
純一が、そう言ってくれただけで私は頑張れるような気がした。


「純一、私、頑張ってみる! 私一人じゃないし、
年下のリナももう決心ついてるみたいだし、年上の私が駄々こねてちゃダメよね!」


『そか…じゃぁ、頑張れよ  あ、怜、帰る日、連絡くれよな』


「うん」


その日は、なんとか落ち着いて眠りにつくことができた。

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