彼のヒーローヴォイス
「あー、こんなとこにいた! 怜 みーっけっ」
へ? な、なに?
私の傍に、一瞬純一かと見間違うような背丈、髪の色の男性が近づいてきた。
「ほら、行くぞー マンガ喫茶行くって約束したの覚えてねぇの?ったくーっ」
黒髪の男性が、私を掴んでいた手を、
その人が引きはがし、いきなり、私の腰に手を回してきた
「ちょっ、なっ…」
“だまって、オレの言うとおりにしたら、コイツらから逃れられるよ”
私を引き寄せて耳元で囁いた。
う… ここは、彼の言うとおりにするしかない…
「あ、えへへ、ゴメンゴメン」
彼のウソに合わせ、私はその場を2人で離れた。
彼らの姿が見えない場所に来たところで、彼が私の腰に回した手を離した。
「あ、あの、ありがとうございました」
「べつに、礼言われるほどのコトじゃないし? それよりアンタ、君塚純一のカノジョ?」
「へっ?! はっ?! な、なんで純一のこと知ってるのっ?!」
「ははっ、図星かよ ま、オレにはカンケーねぇけど…
ま、ガンバレ! 怜ちゃん…」
ヒラヒラと片手を振り、私の前から去って行った…。
その彼が、のちに大ブレイクする『立川 潤』だったなんて、誰が予想できただろう…。