彼のヒーローヴォイス
時は、街がクリスマスカラーに彩られ、夜になるとあちこちでイルミネーションが輝く季節になった。
そんな頃、予想もしない出来事が起こった。
生涯忘れたくても忘れられない、私の人生においての…悲しい出来事だった…
秋から続いたアニメイベントの最終日
イベントを終えてホテルに戻り、帰り支度するためスーツケースに荷物をまとめていると、
ピンポーン♪
呼鈴が聞こえたので、ドアののぞき穴からドアの向こうの人物を確認すると、トモがいた。
ドアを開けると、トモは何も言わず、ズンズンと中に入ってきた。
「ちょっと、トモ、どうしたの? 何? なんかあったの?
あ、もしかして… リナとケンカでもした?」
なにも言わず、部屋の窓際にいるトモの背中に問いかけた。
すると、ゆっくりと振り返ったトモが、私の傍に来て…
「リナとケンカなんてしてねぇしっ… リナは関係ない…
オレが… オレが好きなのは、怜だから…」
「えっ?! ちょっ、ト、トモっ?!」
抵抗する間もなく、トモが私の腕を掴み、ベッドへ押し倒し、私の上に跨った。
「うそっ! トモ?!
だって、トモは、リナのこと好きだったんじゃないのっ?!
トモ、お、落ち着いてっ? やだ…まってっ」
背中と腕で、ずりずりとベッドの上を這うけど、ヘッドボードに追い詰められてしまい、逃げ場がない…
「純一ってヤツと、もう別れたんだろ? もう、オレ、限界なんだ…」
トモの顔が近づき、唇を塞がれた
「んんぅ… 」
必死に両手でトモの体を押すけれど、片手でつかまれてしまい、抵抗できない。
息が出来なくて、酸素を取り込もうと口を開けたら、
すぐさま温かい柔らかいトモの舌が滑り込んで
さらに、口内を侵食された。
空いている足をばたつかせるけれど、意味がなく、
そうこうするうち、首筋へと唇が移動し、生暖かいものが右往左往する
その瞬間、背筋がビリッと電気が通る。
やだ… 純一っ!!
着ていたカットソーの裾から汗ばんだトモの手が忍び込んでくる
「トモ! お願い、やめて! いや!」
私の抵抗など、全然効かない。
「うぅっ…やだ、トモ… う…こんなの、ダメだよ… もう、一緒に、仕事できなくなる…うぅ…」
どうして… なんで…
私の言葉も、全く耳に届かない…
「純一…」
いくら抵抗を試みても女の力はとても弱い…
この時、私の中には、なにもなくなってしまった…
夢も、気持ちも、失ってしまった…
トモは、自分の欲望を私にぶつけた後、『ごめん…』とだけ言い残し、部屋を出て行った。