彼のヒーローヴォイス
次に目が覚めたのは、病院のベッドの上だった。
無機質で真っ白な天井が目に入り、ゆっくりとあたりを見回すと…
専務が私の足元のあたりの傍で、丸椅子に座り、タブレットと睨めっこしていた。
「せん…む…」
かすれ気味の私の出した声に、気が付いた専務は、タブレットを私の足元のベッドの上に置き、
枕元まで近づいてきてくれた。
「怜ちゃん… 大丈夫? ごめんなさいね、このところ、ちゃんとしたお休みなかったから、疲れがたまっちゃったのね… ちょっと早いけど、このままお正月休みにしましょうね
でも、あの日、怜ちゃんが地方イベント先のホテルから先に帰っちゃったでしよ?
なにか…あったの…?」
「………。」
私を見つめる専務の瞳から、瞳を逸らしてしまった…
「なにも、なければ、いいのだけど…」
「あの…リナと…トモ…は…?」
「うん、今月はテレビやイベントの仕事はもうないから、ラジオの仕事だけ、行ってもらってるわ
心配しなくても大丈夫よ、ゆっくり休んでいいからね」
専務の温かい手が私の頭を撫でた。
「せん…む…」
専務の優しさに胸が温かくなり、自然と涙が溢れ出た。
「怜ちゃん?」
頬を伝った涙を、ハンカチを持った専務が頬を少しずつ押さえてくれた。
「怜ちゃん… なにか…あった、のね?」
ゆっくりと頷く私に、一瞬、専務の瞳が大きくなり、そして大きく頷き、
「わかったわ、 今、話すこと、できる?」
再び頷くと、
「じゃぁ、少しベッド起こそうか」
ナースコールのスイッチの隣にかけてあったベッド用のリモコンを手に取り、
ベッドの上半身を起こしてくれた。
「ゆっくりで、いいからね…」
私のすぐそばに丸椅子を置き、そこへ座り、
あの日、起こったことを少しずつ話す私の話に専務は真剣に耳を傾けてくれた。