彼のヒーローヴォイス
○今度こそ…
燻ぶる心…
すべてを1からやり直そうと思った私は
事務所のアパートも、引き払い大学に近くのアパートを見つけ、そこに移った。
それからは、今までの分を取り戻すかのように、毎日大学へ行き、勉強を中心に生活をした。
ユニット時代の収入には、ほとんど手をつけていなかったから、そのお金で食費や家賃を支払え、
私が専攻する科目は、食物栄養学だから、
実験などの大学から来る、アルバイト以外は、特別他のアルバイトなどはしなかった。
月日が流れ3年生になった私は、卒業論文を作成し早く卒業したいと思っていた。
私がユニットを組んで活動してたことは、大学の生徒の一部に知れ渡ってはいたので
冷やかされたり、白い目で見られたり、嫌がらせとまではいかないけれど
講義室へ入ると、ヒソヒソとこちらを見ながら何かを言われたりはした。
それも、覚悟のうえだったから、気にしないように授業に集中をした。
そんな中でも、私の事を気にかけてくれるクラスメイトがいたことに、とても驚いた。
2年の夏休みが過ぎたころから、何かあれば一緒に行動を共にする親友と呼べる子が出来ていたのだ。
「怜、今日の実験のバイト、何時まで?」
講義が終わって、筆記用具を鞄にしまっていると、後ろから声をかけられた。
「あ、マリア、来てたんだ?」
深いグレーの瞳に、綺麗なブラウンの柔らかな長い髪の彼女は、
アメリカ人の母と日本人の父をもつハーフ。
生まれた時から、日本に住んでいるけれど、英語、日本語、中国語、イタリア語がペラペラ
いわゆるお嬢様だけど、お高くとまってるワケではなく、とっても気さく。
どうして、私に興味を持ったのか?
実は、彼女はアニメが好きで趣味はコスプレ。
なるほど、頷けた。
「んー 20時まで、かな。」
スマホを取り出し、スケジュールアプリで確認し、伝えた。
「それじゃ、終わった頃、怜のアパート行っていい?」
「うん、いいけど? なにかあったの?」
「うん? ちょっとね」
さりげなく私にウインクをするから、そんなしぐさが可愛くて、女の私でも一瞬ドキっとしてしまった。
「怜? どしたの? はやく学食いこっ」
マリアは、不思議そうに、固まって次の動作を忘れた私の手を引いた。
マリアさん、アナタは、自分がどれだけ可愛いか、知ってマスカぁー?
そんなことを思いながらマリアのうしろを歩いて行った。