彼のヒーローヴォイス
「さ、食べよ食べよ」
一通り、終えたマリアは、部屋着に着替えてテーブルの反対側に座った私にもカップスイーツを手渡し、
食べるように促す。
「うん ありがと。いただきまーす」
こんな時間にスイーツなんて食べないけれど、こんなことをできるなんて思ってなかったから、正直とても嬉しかった。
「怜? イヤなこと聞いていい?」
「え? イヤなこと? うん?なんだろう?」
「気に障ったら、ゴメンね… もう、ユニット活動はしないの?」
「………。」
こんな直球で聞かれるとは、思わなかったので、答えに戸惑った。
「あ、ごめん! ごめんねっ 言いたく無かったら言わなくていいよ、誰にだって触れてほしくないことあるもんね… ホント、ごめんっ」
テーブルに額がくっつきそうなくらい頭を下げたマリア。
「マリア、頭、上げてっ もう、大丈夫よ、過去のことだし……。
うん…質問の答えをいうと、もう、活動はしないの…。
私の中で、もう完結しちゃったの」
「未練とか、ないの?」
「未練…うーん…ない、なぁ…」
「そっか…」
マリアが淋しそうな顔をした。
「なに? マリア、なんで悲しそうにするの?」
「あ、うん、なんだか、もったいないなぁ…って…。それに…」
いつも、悩みなどない、って自分で言ってるマリアが俯いている…
「どうしたの? また、弟とケンカしたの?」
マリアには3つ下の弟がいて、とても仲がいいそう。というかマリアの家族は羨ましいくらいに仲がいい。
「ううん、違うの… こんなこと、怜にお願いすることじゃないんだけど…
ハル、…ハルトが、怜のいた世界に興味持ってね、どうしたらいいか、私に相談してきたの
だから、怜だったら力になって、くれるかな…って思って…」
弟思いのマリアの優しい一面が私の心を揺さぶった。
「そうだったんだ! そっか… 力になれるかどうかはわかんないけど、
私のマネージャーさんだった人の連絡先は残ってるから、連絡してみようか?」
「えぇっ! ホントに!? ハル、きっと喜ぶよ! 怜、ありがとう!!」
私の方へ回って、マリアは抱きついてきた。
「ははっ、苦しいよ、マリアー」
「いーのっ、怜、大好きよ、ありがとう!」
「ふふふっ うん 私もよ」
この出来事が引き金になり、運命の糸に導かれるように、純一と再会することになろうとは。。。