彼のヒーローヴォイス
榊プロのスタジオをマリアと私と尋ねた。
入口で、スタッフカードをもらい首からかけて、アフレコスタジオまで案内され中に入った。
ハルトくんも、レッスン前の空き時間に合流できて、アフレコスタジオの手前のミキサールームの隅の方に3人で立っていた。
すると、荒井さんが入ってきて、その後ろに、今日のアフレコを行う声優さんたちが、入ってきた。
そちらに目線を移し、入ってくる声優さんを一人一人見た。
すると、その中にいた男性に、目を離せなかった。
純一
荒井さん、これって…ワザと…?
チラリと、音声をミキシングする場で、担当の人と話していた荒井さんを睨んだ。
純一の方からは、私の姿は見えない位置にいたから、当然気づかない。
リハーサルが、淡々と流れるように行われ、そして5分の休憩を挟んで今度は本番が始まった。
本番が始まると、妙な緊張感と、声優さんたちの真剣な演技に釘付けになった。
純一の出番は、少なかったけれど、与えられていたセリフは
魂が籠っていて、素敵だった。
アフレコは、まだ続いていたけれど、私はバイトがあるため、荒井さんに声をかけ、先にスタジオを跡にした。
バイトを終えて、バスルームで汗を流し、あまり食欲がなかったから野菜ジュースだけを飲んで、寝室のベッドに横になった時、リビングに置いてあったスマホの着信音が鳴った。
「んー 面倒くさいなぁ…」
疲れていたのもあって、そのままにしておいた
が、
また、スマホが鳴った。
「んー なんだろう… 」
疲れた体に鞭打って、リビングのスマホを確認しに行く。
テーブルの上の鳴り響くスマホのディスプレイを見れば、名前は表示されていないけど
見覚えある電話番号…
「ウソ…」
恐る恐るスマホを手に取り、画面をスライドさせた。