彼のヒーローヴォイス
4人での卒業祝いパーティを終え、純一が、車で送ってくれた。
先にマリアとハルトくんを送り、そして、私のアパートへと向かっている。
「純一、そこのコンビニでおろしてくれればいいよ、アパートすぐそこだから」
「なに言ってんだ? こんな時間に女一人コンビニになんていたら、あぶないだろ?
アパートまで送ってく コンビニからどういくんだ?」
「え? 大丈夫だよ、すぐ近くだか…」
「いいから!」
純一の声が荒くなったのに、驚き、ハンドルを掴んでいる純一を見た。
なぜ…
純一、怒って…る…の?
「あ、わりぃ… ホントに送ってくから、」
額に片手をやり、すぐにハンドルに戻す。
「うん、わかった コンビニからまっすぐ行った左側の3階建てのクリーム色の建物」
なにも言わず、純一がアパートまで車を進めた。
アパートの前に停まったので、私はシートベルトを外した。
「ありがとう 今日は一日運転させちゃってごめんね 気をつけて帰ってね…」
体を助手席のドアに向け開けようとドアノブに左手をかけると、右手を掴まれた。
え…。
運転席の方を振り向き、純一を見た。
なにか、私に言おうとしてるのか… 少し表情が辛そう…?
「純一? どうしたの?」
純一の方に体を戻し、聞いた。
「……。」
私の手を掴んだまま、なにも言おうとしない…。
「ね?どうし…」
純一の顔を覗き込もうとした時、右手が純一の方へ引き寄せられ、
私の顔の前には、純一のネクタイがあった。
「じゅ…ん…」
顔を上げたその時、唇が塞がれた…
脳裏に一瞬、トモにされた時の記憶が蘇るが、その時とはまるで違う、優しいキスだった。