彼のヒーローヴォイス

会社を辞めてから、1週間。

なにもすることがなく、アパートの部屋でのんびりゴロゴロと過ごしていたところへ


ピンポーン♪



呼び鈴が鳴った。


誰だろう…こんな昼間に…。


覗き穴からドアの向こうを確認すると…



「あ、荒井さん!!」



カギを開け、ドアを開けた。


「おぅ! 怜、お前、会社辞めたんだってな! 
やっと、オレと一緒に働く気になったかっ!!」



ニコニコしながら靴を脱いで、勝手に部屋の中へと入っていく荒井さん。


「ちょ、私、荒井さんと仕事するなんて言ってないですよ!」


荒井さんの背中に訴えるが、なぜか、その声が届かないみたいで…。


「じゃ、怜、3日間だけのバイトなら、いいだろ?
それで、自分が向いているか、どうか考えて、決める、ってのはどうだ?」


3日間だけのバイトかぁ…


アパートにいても、ゴロゴロとしてるだけだし、ちょっとだけなら、いいかな…。


「んー わかった 3日間だけよ」


「よっしや、じゃぁ、あさって、以前行ったスタジオ覚えてるだろ? そこへ9時に来てくれ
待ってるからな!」


まさか、こんなふうな展開になるとは予想していなかった。





そして


これから


私のマネージャー人生が、始まろうとしていた。









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