彼のヒーローヴォイス
あと片付けを終えた私は、純一が台本を読みながら座っていたソファに置いたカバンを持ち、
「純一、明日は10時に迎えにくるから、寝坊しないでよ」
台本に夢中になってたけど
とりあえず、伝えることは伝えて
ソファを離れ玄関に歩き出そうとした……
が……
右手首を掴まれ、ストン、とソファに座らされた。
そして、
私の膝の上に、純一の頭が乗った。
「ちょ、純一! 私、もう帰らないと!」
「コレも、ご褒美だろ?」
「こ、コレもなのっ?!」
しばらくして、寝息を立て始めた純一に
私の膝から近くにあったクッションをあてがい、寝室から持ってきた毛布を純一の体にかけた。
いろいろ大変で、疲れるよね…
柔らかな純一の髪をひと撫でして
部屋を跡にした。
想いが成就することは、きっとこれからさきもないかもしれない
今、純一の傍にいられれば、
私はそれでいい、
ハンドルを握りながら
自分に言い聞かせた