彼のヒーローヴォイス

私の30歳の誕生日が目の前に迫っているある日だった。


マリアとハルトがお祝いしてくれる、というので、待ち合わせのレストランに着いた。

席に案内されると、
すでに二人は、食前酒を飲みながら
盛り上がっていた

「もー、主役をおいて先に2人で出来上がる、ってどーなのよー」

口をとがらせて、ウェイターさんが引いてくれた椅子に座った。

「んもう、堅いこといわないのっ!


ハルトがウェイターさんに、ディナーを始めてもらうよう伝え、
そして、別のウェイターさんが持ってきてくれたシャンパンをグラスに注ぎ
3人で乾杯した。

「怜、30歳おめでとーっ!」

「おめでとう 怜ちゃん!」

「ありがとう、マリア、ハルト」

グラスの合わさる音が心地よい。

運ばれてくるお料理は、どれもこれも美味しくて、マリアとハルトとの時間は
とても幸せだった。

デザートとコーヒーが
運ばれてきた時だった。

「あれ? あれって純一じゃないか?」


ハルトの目線を私とマリアが辿る。


「ほんとだ、純一だわ あ、待って、
社長と……あれは、リナよね… 」

確認の意味で私に視線を向けたマリア

「うん、確かにそうね」

一緒にユニット組んだリナ。

解散してしばらくして、グラビアアイドルになって、それからどうなったかは知らなかった

もう1人一緒にいるのは、
私が勤めていた会社のライバル会社の村川社長。

その4人が何故?

私たちの席からは、4人の姿は見えても、話は聞こえない。

でも、何故かとても嫌な胸騒ぎがする。

「怜?大丈夫? 少し顔色よくないよ」

「あ、うん、ちょっとお手洗いいってくるね」

席を立ち、奥のパウダールームへ駆け込んだ。

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