彼のヒーローヴォイス
○幸せは…

すぐそばに…


香坂怜 30歳


これからは、仕事だけに生きよう。


誕生日の朝、鏡の前で私は自分に誓った。




スーツに着替えて
マリアとハルトが誕生日プレゼントとして贈ってくれた某有名ブランドのペンダントを
ケースから取り出す。


天使の羽とその真ん中にピンクパール。
私に幸せが訪れるように、と二人が選んでくれた。


実際に、このデザインのペンダントは、“願いが叶う”との口コミで手に入れにくい状態だったらしい。

だけど、さすが、マリアの交友関係の力だった。


早速、そのペンダントをつけ
明るい茶髪に染め、ミディアムロングからショートヘアにした鏡の中の自分をしっかりと見て、
気合いをいれて出勤した。



事務所へ着くと、驚いたことに、荒井さんの姿があった。



「えーっ! 荒井さん、お久しぶりです! お元気ですか? どうしてこちらに?」


「おう、怜、元気そうだな! あれ? なんか前と雰囲気違わないか?」


頭の先からつま先まで、頭を上下させる荒井さん。


「あ! 怜ちゃん! 髪切ったでしょ? それに色も染めたー?」


私の後ろから柿谷くんが入ってきて、すぐに私の変化に気づいた。


「え、まぁ…気分転換に…ね…」


「うんうん、怜ちゃん似合ってるよ! 垢抜けた感じー」


「そ、そう? あ、あんまり見ないでね、さ、さ、仕事しましょ、仕事仕事」



私は自分の机に鞄を置き、椅子に座り、机の上のパソコンの電源を入れた。
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