彼のヒーローヴォイス

立川くん、細井くんを交えての合宿が始まった。


純一は、なにかといえば、立川くんと衝突寸前。


立川くんの気持ちもわからないではない。


お互いがお互いとも、比較され続け、しかも若手声優界の代表だもの。



私はこの合宿が純一にとって、糧になればいいな、と思っている。

そのためには、なんとか私も力になりたいのに…。

空回りの毎日。



挙句、合宿所の近くの公園で、躓いたところを立川くんに助けてもらっただけなのに、

抱き合っていた、って純一に勘違いされる始末。

みんなに見えない場所で、純一に違うことを説明するけど、わかってもらえない…。

すると、立川くんと奥さんが、傍を通り、純一が立川くんと口論になってしまった。

あー もう…。 散々だわ…。

私と立川くんと、コトの真相を説明し、ようやく納得した純一。

純一にこんな思いさせる私、マネージャー失格ね…。
立川くんと、一緒に来ていた立川くんの奥さん、マナカさんが、うらやましくてしょうがなかった。


すると、立川くんが意を決したように口を開いた。

「あのさ…
余計なお世話だろうけど…

アンタらお互い想い合ってんだろ?!
お互いのこと気遣うのはわかるけど、相手のことを思い過ぎて
大切なもの壊しちまったら何にもなんないぞっ!!

許嫁か婚約だか、なんかしらねぇけど
2人でちゃんと考えたら、なにか道が開けるんじゃね?

いっぺん、納得いくまで2人でとことん話し合えよっ!

お互い納得してねぇから、いろんな感情で揺れるんだろ?!

合宿中、アンタらのイザコザでオレもみんなも巻き込まれたくないからさ…」

立川くんの言葉に、純一はムッとした表情を露わにした
なにか、立川くんに危害を加えないか心配で、
私は、純一の腕にそっと手を添えた。

立川くん、私と純一のことすごくよく見てるんだ…。

だから…、マナカさんみたいな素敵な人と結ばれるんだね。

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