K
「はぁ…」
研究室に着くまでに、俺は滝のような汗を流していた。
キャンパス内を歩いている間、ずっと蝉が鳴いていたせいでまだ耳に残っている。
研究室内は、入るとひんやりとしていた。
薬品などが置いてあるため、この館の空調は自動的に整備されている。
さすがにこの時間は誰もいない。
冷蔵庫や、インキュベーターのうなりみたいな動作音だけが響く。
俺ははやる気持ちで、奥の培養室まで向かう。
俺の、F-08はどこだ。
あたりを見回すが、見当たらない。
どこかほっとする。
ここにないということは、ちゃんとインキュベーターに入れたのだ。
そう思い、確認しに行くとお目当てのシャーレは行儀良くインキュベーターのなかに並んでいた。
「よかった…」
はあぁ、と安堵のため息をつく。
俺の研究が、守られた…。
この試験体だけが、上手く培養できていたのだった。
ここから次に繋げなくてはならないので、これがもし死滅していたらおしまいだった。
安心すると、眠気がやってくる。
昨日は結局寝たのは26時だった。
少し仮眠をとってから、実験を進めよう。