K


既にお馴染みとなった、ソファを目指す。
昼前に起きればいいだろう。



そう考えてソファに身を投げたが、ふと思い出す。



そうだ。

実験の準備だけしておこう。

実験というのは時間がどうしてもかかる。
段取りがとても重要だ。
丁寧にやらねば失敗するし、時間をかけすぎても終わらない。

地味で地道な作業の繰り返し。


「やるか…」

俺は重い体を動かし、用具を取りに奥にある棚まで歩いた。

必要なものをとり、自分がいつも使用する作業台に置く。


試験管、ビーカー、フラスコ、バーナー、シャーレ、光学顕微鏡…

培地を今日はつくらなきゃな…



俺、本当に卒論終わるのだろうか。

まだ8月…いや、ほんとにまだ、か?
もう、8月じゃないのか?


螢なんて涼しい顔をしていたし、沙雪もああ見えて優秀だ。



できる奴が、そばにいると無駄に焦ってしまう。


思えば俺は昔から螢に、対して劣等感があったかもしれない。

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