K
「螢達は、知ってるのか?吉野さんの、その…死んだ時のこと」
俺がそう聞くと、螢の表情が曇る。
陽世子も口を噤んで、俯いてしまった。
「そう、か…」
彼らも警察に事情を聞かれたのだ。
俺が見たものは、そのときに聞いているだろう。
それでも、彼らがあの光景を見ることにならなくてよかった。
最初に見つけたのが、俺でよかったと思う。
きっと陽世子だったら卒倒していただろう。
それから俺たちの間は妙な沈黙になり、…きっと誰もが整理がつかないのだろう。
陽世子の顔色が悪いので、俺のアパートからほど近い陽世子のアパートまで彼女を送ることになった。
今日はいろいろと疲れたのだろう。
彼女を送ると、俺と螢はまるで試合に負けた選手のようにとぼとぼと道を歩いていた。
「なあ」
少しして、螢が口を開く。
「なんだよ」
「お前、誰だと思う」
なにが、と聞かなくてもわかる。
「犯人、か」
警察は、これだけ残忍な殺し方をするということは被害者に怨恨のある人物だろうと言っていた。
しかし、果たしてそうだろうか。
だって、吉野美穂子はあんな殺され方されるような人間ではないのだ。
「お前は、どう思う」
「吉野さんに…個人的な恨みを持つ奴なんているのか?俺はそうは考えられない」
警察はその線を捜査するようだけれど。
それにしては不可解な点が多すぎる。