K
その様子を見ていた関根の視線を感じた。
「なに、わかんないとこあんの?」
「ううん」
「んじゃ、なに?」
関根はあほで単純な加藤と違って大人びている。
女の子は男より精神年齢高いって言うしな。
しかもひいき目に見ても、関根はかわいい。
長い黒髪とくりくりの二重でまるで絵に描いた美少女だ。
おまけに頭もいい。
「せんせって彼女いないんだよね?」
「うるせーな、関根までそゆこと言う?」
ったく、この歳の子供はほんとにこういう話題好きな。
あいにく奴らが聞いておもしろいネタは持ち合わせていない。
「だって、せんせーずっといないじゃん」
「関根はいるのかよ」
むっとして言い返す。
俺に彼女ができないのをこいつらはおもしろがっているだけだ。
プリントに向かっていた加藤までにやにやしている。
「ん?まあ…いるかな」
「なんだよその間は」
そう言うとふふふ、と意味有りげに笑う。
その顔は清純な少女ではなく、ひとりの女に見えた。
くそ。
女子って恐ろしいな。
きっと何人かの男を手玉にとっているのだろう。
なにしろ関根は可愛い。
そのことに気づいたのか、加藤は関根を2度見してうつむいた。
加藤よ、女とはこういう生き物だ。
学んでくれ。
俺は青少年の成長をいろいろな意味で暖かく見守っていた。