K
螢とつるむようになって数ヶ月経った頃のことだ。
「洋一、見ろよあれ」
「んー」
クラスメイトに言われて、廊下から中庭を見下ろす。
中庭は生徒がリフレッシュできるよう、とかいって最近リニューアルされて都立高校の割にはきれいに整備されていた。
木に隠れて初めは気づかなかったが、奥の壁沿いに男女が一組立っている。
「螢じゃないか」
「隣の、長谷川さんじゃね?」
「お、ほんとだ」
長谷川真琴は学内で美少女と言って初めに名前が挙がるような女子だった。
大きな瞳と、ストレートの黒髪。
ポロシャツから伸びる手足が白くて細い。
「うわー唐島、いいなあ。長谷川さんかわいいと思ってたのに」
「ははっ、残念だったな」
なにか話しているようだ。
まあ、内容はここまできたらわかりきっているが。
遠くて表情は見えないが、長谷川さんが一方的にしゃべっているような感じだった。
そしてふいに、その華奢な指が螢のYシャツに伸びる。
「お、意外に大胆」
「キスか?キスか?」
しかし俺たちの期待をよそに、螢はやんわりとその手を拒む。
「あ〜」
「なんだよ、もったいねえ」