K

するとすこしして、長谷川真琴は走り去ってしまった。


泣いていたような気がしなくもない。


その背中を見送っていた螢が、ぱっと顔を上げた。



ばちっ


「・・・やべ」

「こっち、見てるよな」



螢の視線が痛い。
きっと呆れた顔をしている。



螢はよく告白されるが、それを見られるのをとにかく嫌っていた。
盗み見ていたなんて、あとで絶対嫌味を言われる。



案の定、昼休みが終わって帰ってきた螢にぐちぐち言われた。
そして最後に「悔しかったら彼女作ってこい」と言われるので、何も言えない。
俺とクラスメイトはお互いに目を合わせてため息をつくのだった。




「あ、葛西」

「ん?」

「今日放課後暇か?バイトある?」

「いや、なんもないけど」


螢から誘うなんて、珍しいこともあるものだ。
遊ぶときは大体俺から誘うことが多かった。


「そうか、じゃあ一緒に帰ろうぜ」

「おう、いいよ」



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