K
一緒に帰ろうと言ったわりに、螢は「ヤボ用」と言ってHRが終わると立ち去ってしまった。
なんだそれ、と思ったがいちいち気にするほどではない。
今日はバイトもないし、ぼーっとしよう。
校庭では部活動がもう始まっていて、俺は窓際の机に突っ伏してそれを眺めていた。
もう初夏を通り越して夏本場になってきている。
よくもまあこんなに暑いのに、日陰ひとつない校庭で走り回れるよな。
都立ではあるが進学校のうちの高校では、部活は基本的に2年までだ。
きっと今校庭で息を切らしている同級生たちは、来年の今頃に引退し始める。
「必死、なんだろうなあ」
自分はバイトをするために部活に入らなかったが、なにかしら入っていても良かったな。
机に突っ伏してうとうとしていると、携帯のバイブの音で飛び上がった。
「うわ、今何時って・・・螢?」
メールの受信先は螢だった。
TO 葛西洋一
第二視聴覚室 はやくこい
FROM 唐島螢
なんだこれは。
人を待たせておいて、わざわざ来させるとか何様のつもりだ。
とりあえず、会ったら文句を言ってやろう。
そう思い、まだ螢の机に掛かっていた彼の鞄を掴み、第二視聴覚室のある北棟へと向かった。