K
「え・・・は?」
第二視聴覚室に入った時、「間違えた」と思った。
なので一度、扉を閉めた。
しかし、頭を整理して俺はもう一度扉を開き、中に飛び込んだ。
「螢っ!!」
螢は、床にごろんと転がっていた。
その上には、背の高い男が覆いかぶさっている。
俺は訳も分からず男に突っ込み体当たりをした。
男は豆鉄砲をくらったような顔をしてなすがままに俺に跳ね飛ばされる。
無我夢中で螢の腕を掴み、もつれそうな足を無理やり奮い立たせ走った。
後ろから男の怒鳴る声が聞こえた。
顔こそまともに見てはいないが、真正面から喧嘩したら2対1だとしても不利な気がした。
「はあっお前っ…なんだこりゃ!」
「来るの…おせーんだよ」
走っているので息が切れて喋りにくい。
「遅いって、お前なあ!!」
「とにかく…校内から出よう!」
全速力で走る。
きっとすぐに追ってくるだろう。
追いつかれたら勝てない。
俺の頭は疑問府だらけだったが、何よりもまず足を動かさなければならないことだけは本能的に理解できた。
やっと高校から出て、俺たちの息が通常に戻ったのは帰り道にある公園のベンチに座って数分してからだった。
「あれは、なんだったんだ」
「見りゃわかるだろ。襲われてた」
一瞬、言葉に詰まる。
「襲うって、お前、あれはその」
「強姦されかかってたんだよ」
俺は、多分これでもかってくらいに目を見開いていた。
「あの人…男だろ?」
「まあ、そうだね」
螢はなんともない、と言うように空を見上げた。