K
「よ、くあんの、あーゆーこと」
確かに螢は、男の俺でもハッとするような綺麗な顔をしている。
頭もいいし。
だからって男にまでモテるとは。
まだ人生経験の低い俺にとっては衝撃も衝撃だった。
「まあ、ちょこちょこ」
「…やべーな」
俺がショックを受けていると、螢は鼻で笑う。
「まあ、今回は呼び出された時からなんかやべえって思ったけどな。目がまじだったし。だからお前待たせといて予防線張ったんだけど」
「あ、だから一緒に帰ろ、ね」
「でも、まじで助け呼ぶことになるとは、思わなかった」
螢と目が合う。
口元は笑っているが、目が笑っていない。
それを見て、ああと思う。
きっと一度や二度のことではないのだろう。
こういった類の好意に、彼はきっと辟易としているのだろう。
俺はため息をつく。
目の前の友人の不幸な境遇に同情して。
「お前って、ほんと変な奴引き寄せちゃうよなあ」
「…悪かったな」
少し拗ねたように言う。
螢はなにも悪くないのに。
彼にとってこの世界は、なんとも生きにくい。
公園はもう夕暮れで、子供だちは親に連れられて帰り仕度をしていた。
だんだんと人気がなくなっていく。
「今回は助かった。ありがとう」
「おう。今度こういうことがあっても、秘密にすんなよ」
「うん」
「危ないってなる前に言えよな。俺、今日の人と喧嘩しろって言われても勝てねえから」
「ははっ、そうだな。香西は優しいから」
優しい。
俺が?
そう思ったが螢が気の抜けたように目を瞑っていたのでなにも言わなかった。