K
「香西は?最近どうなのよ、そっちのほうは」
「え、ああ…」
「濁すんじゃないわよ」
ずい、と身を乗り出し俺に詰め寄る。
「何もないよ、本当に」
「…なーんだ、つまんないの」
そう呟くと、沙雪はさっと立ち上がり入り口の方まで歩いていく。
そんなあっさり興味をなくすのなら、聞かなければいいのにと思う。
女の子はいつだって男の範疇を超えた場所にいる。
「この部屋、暑いわよ。よくこんなむさいとこで寝れるわね」
そう言ってクーラーのボタンをカチカチと操作する。
じっとしているぶんには何も感じなかったが、確かに蒸し暑い。
9月といえど、日中はかなり暑い。
いまだに蝉も鳴いているし、夏と変わらない。
研究室は基本的に窓を開けてはいけないので締め切ったままだった。
この男臭さに耐えられなかったのだろう。
冷気を気持ちよさそうに浴びる。
彼女にとっては、自然を愛する気持ちよりもこういった機械的なものに頼ることの利便性のほうが重視されるようだった。
「天気、いいわね」
一体沙雪は何をしに来たのだろうか。
そう思って、ぼんやり彼女を眺める。
相変わらずの細く、白く伸びた肢体が、夏の日差しに照らされてより透明度を増していて美しい。
観察していると、怪訝な顔をされた。
「香西、さ」
「ん?」
「陽世子のこと、実際はどう思っているの?」