K
ソファが軋む音がして、向かいに螢が座ったのがわかった。
目を向けると、思わず感心してしまう。
外からの陽光が螢に降り掛かって、まるで映画のワンシーンのようだった。
「やーお前って、ほんといい顔してるよな」
改めてそう言うと、あからさまに嫌な顔をされる。
螢は男の割にきれいな顔立ちをしている。
俗に言うイケメンと言うやつだ。
さらさらの髪と白い肌と研究室に入っているからあたりまえだが、白衣という姿が女子たちのハートをがっちりと掴んでいることを俺は知っている。
なによりたちが悪いのが、上品な顔をしているせいで理系学科に進んだような素朴な女子達が、その顔に騙されてしまうということだ。
「罪な奴…」
「香西、喧嘩売ってんの?」
「まーさか」
高2のときから螢とつるんでいるが、奴のそのそっけなさと省エネな性格は変わらない。
それでもこんな俺と大学、そして研究室まで一緒ということは少なくとも螢は俺のことが嫌いではないということがわかる。
というか、こんなつんつんした奴、俺のほかに仲のいい友人なんていないだろう。